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猟師の話 |
第2号「シカ肉食うべし!」牧瀬一郎Source: 屋久島ヒトメクリ
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春、山桜 の咲く頃になると、シカの角が落ちる。初秋のススキの穂が開く頃 までに少しずつ成長してヤクシカの角は生え代わる。
木の芽流 しの頃、捕獲したシカの角は松茸のように伸びている。これは袋角 と呼ばれ、乾燥処理するとという漢方薬の原料となる。風邪などで熱が でたと きにスライスした鹿茸を煎じて飲むと、汗が吹き出て熱がさがるらしい。私はま だ試したことがないのだが、夫婦円満にも貢献する らしい。ユンケルなどの高 価な滋養強壮剤のラベルを見ると鹿茸と書いてある。「納得」。おっと、今回は シカ肉レシピの話でした。
フランス では、野生肉の料理はジビエ料理といって、フランス料理の最高峰 に位置づけされているという。私は、フランス料理をほとんど食べたこ とがな いので、屋久島での日常のシカ肉料理法を紹介します。
まず、美 味しいシカ肉を頂くには、捕獲後すぐに首の付け根あたりにナイフ を入れて、素早く血抜きをし胃袋を取り出します。片足を吊るして皮を 剥ぎ、 頭を切り落として腕肉、背ロース、股肉の順で解体していきます。調理しやすい サイズのブロック肉に切り分けてラップに包んでマ イナス20度以下で冷凍すれ ば、3ヶ月ほどの長期保存でも美味しく食べられます。
【背ロースの刺身】
半解凍し た背ロースを薄く切る。スライスした玉ねぎの上に並べてショウガ 醤油、ニンニク醤油で食す。タタキにするとさらに美味。わが家では、 島外か らの客人には必ず振舞うメニュー。福岡から来たおばちゃんは、「今日、山で可 愛いバンビちゃんを見たから食べられない」と言い つつ、一人で一皿平らげた。
【骨付き肉の味噌煮込み】
アバラ 骨、背骨、胴骨、スネ、腕肉を食べやすいサイズに鉈でたたいて、ア クを取りながら時間をかけて煮る。大きい胴骨とスネは味付けをする 前に犬用 に分けておく。猟犬のおかげでシカ猟ができるのだから、愛犬にご褒美を忘れて はならない。玉ねぎ、大根を加えさらに煮込ん で、ザラメ、味噌、醤油で味付 け、ネギをちらして食す。高菜があれば、なおよろしい。残り汁に豆腐、うどん も最高。
【レバーステーキ】
新鮮なレ バーを4等分に切って流水にさらし血抜きをしっかりして1cm厚さ に切り分け
る。ニンニ ク1かけを包丁の背でつぶし、ビニール袋にレバー、ニンニク、醤 油、酒少々を入れ袋の上からもんでタレをなじませる。冷蔵庫で一晩ね かせ て、フライパンにサラダ油をひいてソテーすればレバーステーキの出来上がり。 さらに薄く切って漬け込めばレバーマリネとして生で 食べられる。私の職場の 和樹くんは、漬け込んだレバーを竜田揚げにして弁当のおかずにしていた。とて も美味かった。
【シカタン】
基本的に は牛タンと同じ。シカの舌(ベロ)に熱湯をかけてベロのザラザラ を包丁でこそぎ落とし、薄く切って塩、黒コショウをして炭火で焼く。 食べる 寸前にレモン汁をかけて食す。
【シカのヒレカツ】
ひれ肉 (肉ロース)を1本そのままカツに揚げてから、輪切りにして皿に盛 りつけ、大根おろしを乗せポン酢をふりかけて食す。
【ネックカレー】
ネック、 すなわち首の肉です。首肉はスジが多くて焼き肉にすると硬くなる ので、歯が弱くなった人は食べるのが少しつらいです。でも、味は最 高。よく 煮込んでカレーにするとかなり美味い。
その他、 ジンギスカン、みそ炒め、マリネなどありますが、要は豚肉、牛肉 をシカ肉に代えて料理しているだけです。シカ肉だからといって特別な ことは ありません。もし新鮮なシカ肉が手に入ったら、皆さんもチャレンジしてみてく ださい。
今後、屋 久島のプロの料理人たちが集まってシカ肉のレシピ研究会を作り、 試食会などを行ってくれることを願うばかりです。
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